第76回カンヌ国際映画祭で「パーフェクトデイズ」公式上映後、拍手に応えるビム・ベンダース監督(中央)、役所広司さん(右から3人目)ら=2023年5月25日、勝田友巳撮影

第76回カンヌ国際映画祭で「パーフェクトデイズ」公式上映後、拍手に応えるビム・ベンダース監督(中央)、役所広司さん(右から3人目)ら=2023年5月25日、勝田友巳撮影

2023.5.26

「パーフェクトデイズ」上映に大拍手 「喜んでもらえてうれしい」役所広司

第76回カンヌ国際映画祭が、5月16日から27日まで開催されます。パルムドールを競うコンペティション部門には、日本から是枝裕和監督の「怪物」、ドイツのビム・ベンダース監督が日本で撮影し役所広司が主演した「パーフェクトデイズ」が出品され、賞の行方がきになるところ。北野武監督の「首」も「カンヌ・プレミア」部門で上映されるなど、日本関連の作品が注目を集めそう。ひとシネマでは、映画界最大のお祭りを、編集長の勝田友巳が現地からリポートします。

勝田友巳

勝田友巳

第76回カンヌ国際映画祭で25日、コンペティション部門に出品された「パーフェクトデイズ」の公式上映が行われた。ビム・ベンダース監督と主演の役所広司、出演したアオイヤマダ、中野有紗、田中泯らがレッドカーペットを歩き、上映に臨んだ。
 
ベンダース監督は「パリ、テキサス」(1984年)でパルムドールを受賞するなど、大物ぞろいの今回のカンヌでもひときわ人気が高い。会場に姿を見せると観客がさっそく総立ちの大拍手。上映後には再び総立ちとなって喝采が送られ、ベンダース監督と役所は抱き合って喜んでいた。マイクを渡されたベンダース監督は「この映画ができたのは、俳優たちのおかげ」と俳優陣や関係者に感謝をささげていた。
 

第76回カンヌ国際映画祭で「パーフェクトデイズ」について語る(左から)中野有紗、田中泯、ビム・ベンダース監督、役所広司、アオイヤマダ

ベンダース組はいいチーム

上映後の記者会見で、平山を演じた主演の役所は「観客の温かい拍手を聞いて、楽しんでもらえたと安心した。ベンダース組はいいチームだとつくづく思った」とホッとした様子。「初めてこの映画を見たお客さんが喜んでいるのを見て、よかったと思います」
 
平山のめい、ニコの中野は「歓声と拍手を肌で感じて感動した。日本人の感性、隠れがちなものをきれいに描いた作品で、反応に不安はあったけれど、スタンディングオベーションを見て伝わったと確信した。日本独特の美しさが伝わったのがうれしい」。平山が遭遇する路上生活者の田中は「自分が出演したことがうれしくてしょうがない。拍手を受けて、役所さんに『やったね!』と飛びつきたかった」と話した。
 
アオイは平山の同僚が思いを寄せるアヤ役。「日本の細やかさを表現した作品を世界の人が見てくれたことに感動した。平山の日常は幸福の象徴で、拍手は世界が平和であり続けてほしいという願いだったと思う」と涙をにじませた。
 

「パーフェクトデイズ」より © 2023 MASTER MIND Ltd.

公共トイレ清掃員の日常描く

「パーフェクトデイズ」は、東京の下町のアパートに1人で住むトイレの清掃員が、早朝に起きて仕事に行き、帰宅して寝るまでの日々とその中の小さな出会いを、ルー・リードやオーティス・レディングらのロック曲に乗せて淡々と描く。渋谷区の公共トイレを改修して快適にする「THE TOKYO TOILETプロジェクト」の一環として製作された。
 

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。