ボストン市庁舎 c )2020 Puritan Films, LLC-All Rights Reserved

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2021.11.18

特選掘り出し!:ボストン市庁舎 社会の縮図、対話まぶしく

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

刑務所、動物園、学校、美術館、劇場、図書館など、あらゆる場所に精力的にカメラを向け続けているアメリカのドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマン。1930年生まれの彼が新作の題材に選んだのは、自身の出身地でもあるボストンの市庁舎だ。約4時間半という上映時間につい及び腰になったが、始まってしまえば市役所の裏側で繰り広げられる出来事の数々に、あっという間に引き込まれてしまった。

同性カップルの結婚、高齢者やホームレスへの支援、看護師の労働環境の改善など、さまざまな問題に取り組む市役所はまさに現代社会の縮図。市民と建設的な対話を続けようとする職員たちの姿に、いわゆる〝お役所仕事〟とは違う理想を見いだす観客も多いのではないだろうか。何よりも市民のことを考えて施策を実行していくマーティン・ウォルシュ市長の姿は、まぶしく見えるほどだ。インタビューやナレーション、テロップや追加音楽などもない、観察者としてのワイズマンのスタイルは本作でも健在。あらゆる問題を〝自分ごと〟として考えさせてくれるドキュメンタリーになっている。4時間34分。東京・Bunkamuraル・シネマ、大阪・テアトル梅田ほかで公開中。(細)

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