「ZOLA」© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved

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2022.8.26

時代の目:「ZOLA」 危ない旅、新鋭が爽快に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

デトロイトの一般女性が実体験を投稿した148のツイートを基に映画化。一気呵成(かせい)なストーリー展開でぐいぐい引きつけるロードムービーだ。物語の核となる売春とコメディーを覆い尽くすフロリダの陽光とともに、スリリングと爽快感満載のエンタメ作品だ。

ウエートレスでストリッパーのゾラ(テイラー・ペイジ)は、勤め先のレストランに来た客のステファニ(ライリー・キーオ)とダンスで意気投合し、連絡先を交わす。翌日、ステファニから「ダンスで大金を稼ぐ旅に出よう」と誘われ、迷いながらも一緒に出かけるがトラブルに巻き込まれる。

女2人旅には、ステファニの不器用なボーイフレンドと暴力的な男Xが同行。「ポン引き」のXがステファニに売春させる古典的な展開かと思っていると、ツイッターの通知音が鳴り、SNSも全開。ストーリーラインを導くテンポの良さと軽妙な音楽、ハラハラドキドキの高揚感で86分を駆け抜ける。終わってみれば、男の抑圧をはねのける女性の向上、警察官による黒人への暴力描写など社会性も加味されているが、何よりも新鋭ジャニクサ・ブラボー監督の剛腕への期待が膨らんだ。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(鈴)