「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.12.02

チャートの裏側:迫力のライブ 歴史刻む

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

一昨年、活動休止を発表した嵐の20周年記念ライブ映画がトップだ。この土日は興行収入4億4000万円。11月28日時点での累計は、何と17億9000万円にのぼる。同3日から全国7館で先行上映されており、200館に増えた26日からの分を加えたのが、さきの累計となる。

入場料金は大人が3300円と高く、通常の興行とは違う。それは演出上のさまざまな工夫も含めて、ライブを存分に堪能できる作品になっているからだ。だから、ライブにより近い料金設定がなされている。平均入場料金は1人3000円を超える。これで興行収入がぐんと上がる。

先行上映されていた頃、「嵐のライブ映画の最終興収は50億円もありえる」と聞いた。抜群の音響効果を誇るドルビーシアターでは、満席が続いた映画館もあった。その時点で、以降の前売りチケット販売が並外れていた。これらが「50億円」の根拠になったとみえる。

私が見たシネコンでは、空のペットボトルを振りかざす若い女性客がいた。まさにライブ感覚だ。50億円うんぬんはさておき、作品から、なぜ嵐が持続的な人気を獲得できたかがわかる。固有の魅力をもつ5人は誰一人突出しない。ファンが、それを長年支持してきたのだと思う。興行に歴史を刻み、深みのあるライブ映画が生まれた。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)