毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.6.17
クワイエット・プレイス 破られた沈黙
人類の大半が死滅した終末的な世界観の下、〝音〟に反応して襲ってくる地球外生物の恐怖を描いたSFホラーの続編。前作で夫を亡くし、農場の家も失ったエヴリン(エミリー・ブラント)と3人の子供が安住の地を求めて旅に出る。その道中、廃工場に迷い込んだ一家はエメット(キリアン・マーフィ)という生存者と出会う。
映画会社の想定を上回る前作の大ヒットを受け、製作費を大幅に増額。謎の生物が初めて襲来した〝1日目〟の出来事を映像化したシークエンスは、大がかりなスペクタクルと緊迫感に満ちている。その一方でジョン・クラシンスキー監督は、いたずらにスケールアップを図って失敗するという続編の罠(わな)を回避し、耳が不自由な娘リーガン(ミリセント・シモンズ)の成長ドラマを掘り下げ、静寂を生かした巧みなサスペンス演出にも腕をふるった。前作の革新性を超える驚きはないが、今回も息を詰めて濃密なスリルに浸れる上々の出来栄えだ。1時間37分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)
ここに注目
この手のホラーの続編は、1作目で見つけた敵の弱点を攻略しつつ、危険な課題に挑むのが王道だ。今作では補聴器と水を小道具に、助けを求めるリーガンとエメットの旅、地下にくぎ付けのエヴリンと幼い子どものスリルを並行させて飽きさせない。ただ、1作目の復習は必須。(勝)