わたしはダフネ  (c) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

わたしはダフネ (c) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

2021.7.01

わたしはダフネ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

とあるキャンプ場で休暇を楽しんでいたダウン症の女性ダフネ(カロリーナ・ラスパンティ)の母マリアが突然他界した。ダフネは悲しみをこらえ、少しずつ日常を取り戻していくが、父ルイジ(アントニオ・ピオヴァネッリ)はふさぎ込みっぱなし。やがて2人はダフネの提案で、マリアの故郷を目指す旅に出る。

フェデリコ・ボンディ監督がSNSで見いだした演技未経験の主演女優ラスパンティが、全編を牽引(けんいん)する家族劇だ。赤毛のダフネは一見少女のようだが、いざ口を開けば率直かつ成熟した物言いを連発。勤務先のスーパーの同僚、旅先で初めて出会った人々とも分け隔てなく接する彼女のおおらかな一挙一動が笑いや驚きを生み、映画を活気づける。そんなダフネと年老いた父のささやかな冒険を、そっと見守るカメラのまなざしもいい。社会の障壁をすいすい越えるダフネ、険しい大自然を歩き続ける父子の姿から、豊かな無言のメッセージが伝わってくる良作だ。1時間34分。東京・岩波ホール(3日から)、大阪・シネ・リーブル梅田(23日から)ほか。(諭)

ここに注目


 快活で素直、思ったことをズバズバと言い放つダフネの姿に最初は面食らった。皮肉屋で父母とのストレートな会話に首をかしげもしたが、目の前の問題を突破していくバイタリティーや社交性にじわじわ引き込まれた。演技なのか素なのか、ラスパンティが終始躍動している。(鈴)