パンケーキを毒味する  ©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会

パンケーキを毒味する ©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会

2021.7.29

パンケーキを毒見する

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

菅義偉首相を真っ向から批判する政治ドキュメンタリーだ。「新聞記者」などの河村光庸プロデューサーが、政治とメディアへの怒りをぶちまけた。観客と社会を「このままでいいのか」と挑発し、おとなしい日本映画界にも揺さぶりをかける。米国のマイケル・ムーア監督ばりの勢いである。

首相の政治的来歴をたどり、後輩の政治家や評論家の証言でその資質を分析して素顔に迫る。反菅勢力に批判させ、学術会議の人事をめぐるトンチンカンな国会答弁を、上西充子法政大教授が実況解説。省庁のナンバー2を集めて側近とした人心掌握術も図解する。

もっとも、内容は既に報道されたことの総ざらえで新味はなく、テレビのバラエティー番組的な風刺アニメも効果的とは言いがたい。取材の時間も情報源も限られたことがうかがえて、批判の矢の鋭さはムーア作品には及ばない。それでもエンタメ色を加えた映画に仕立て、五輪にぶつけた心意気を良しとしたい。内山雄人監督は、何人もの候補が断った末に引き受けたという。映画冒頭の、取材を断る若手議員事務所とのやり取りだけでも、困難さがうかがえる。第2、第3の矢を期待したい。1時間44分。東京・新宿ピカデリー、大阪・梅田ブルク7ほか。(勝)

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