「戦争と女の顔」© Non-Stop Production, LLC, 2019

「戦争と女の顔」© Non-Stop Production, LLC, 2019

2022.7.15

時代の目:「戦争と女の顔」今も勝利の名の下に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1945年、終戦直後のレニングラード。看護師イーヤはPTSDを抱えながら、傷病軍人の病院で働き子どもを育てていた。ある日、イーヤは発作による事故で子どもを死なせてしまう。子どもの母親で戦友のマーシャが戦地から帰還。マーシャは夫が戦死し、負傷で子宮を失い、自分の子どもを産むようイーヤに要求する。

ノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチがソ連の従軍女性の証言を集めた「戦争は女の顔をしていない」を原案に映画化。ソ連は多くの女性が兵士として戦い、イーヤやマーシャのように男たちから虐げられ「現地妻」と蔑視されることもあった。マーシャが緑色のワンピースを着てはしゃぐ姿は、本来なら青春を謳歌(おうか)しているだけに鮮烈。その後、上流階級の女性に戦地で生き延びるための告白をする姿との落差があまりに壮絶で息をのむほどだ。

ウクライナ侵攻が続く中で注目された対独戦勝記念日。背後にはイーヤやマーシャ、安楽死を懇願する兵士ら戦争の傷痕が充満していた。映画は今も為政者の勝利の名の下に女たちの苦難が繰り返されていると訴えかけてくる。カンテミール・バラーゴフ監督。2時間17分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

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