「ドリーム  狙え、人生逆転ゴール!」Netflix独占配信中

「ドリーム  狙え、人生逆転ゴール!」Netflix独占配信中

2023.8.09

バテる心にもカツ! パク・ソジュン主演「ドリーム 狙え、人生逆転ゴール!」

さあ、夏休み。気になる新作、見逃した話題作、はたまた注目のシリーズを、まとめて鑑賞する絶好機。上半期振り返りをかねつつ、ひとシネマライター陣が、酷暑を吹き飛ばす絶対お薦めの3本を選びました。

梅山富美子

梅山富美子

日本でも大ヒットした韓国ドラマ「梨泰院クラス」で主人公を演じ、映画「マーベルズ」でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品に初参加と、世界から注目を浴びるパク・ソジュン。彼が主演を務める「ドリーム 狙え、人生逆転ゴール!」は、選手生命の危機に立たされたサッカー選手のユン・ホンデ(パク・ソジュン)と、「ホームレス・ワールドカップ」に出場して勝利を目指す韓国代表チームの物語。Netflixで独占配信中だ。


社会的弱者の再起 涙とユーモアで

短気なホンデは、失礼な記者に〝目潰し〟をしてしまい、イメージ回復のため不本意ながらホームレス・ワールドカップの韓国代表の監督を引き受けることになる。
 
そこで出会うのは、友人の保証人になり財産を失ったヒョボン、幼い頃に両親が無理心中して施設で育ったインソンなど、さまざまな事情から社会的弱者となってしまった代表チームの選手たち。心に傷を負った彼らが、サッカーを通じて絶望の人生から立ち直ろうとする姿が、涙とユーモアたっぷりに描き出される。


実在するサッカー「ホームレス・ワールドカップ」

パク・ソジュンが、プロの選手のくせに未経験者と張り合うなど大人げない性格だが、どこか憎めないホンデを好演。また、「ベイビー・ブローカー」のIUが、代表チームを取材するドキュメンタリー番組のプロデューサーのイ・ソミン役で出演。ソミンは、ホンデに負けず劣らずのずぶといキャラで、時には〝ヤラセ演出〟をすることも。ホンデとソミンの作り笑いでの会話の応酬は皮肉が利いており、思わず笑ってしまう場面も多い。
 
なお、ホームレス・ワールドカップは、実際に行われており、人生に一度だけホームレス状態の人が選手として参加できる大会。このような取り組みが行われていることを知り、社会に関心を寄せることができるのは、映画の魅力の一つではないだろうか。
 

アツすぎるお仕事ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」




「一流シェフのファミリーレストラン」は、超一流レストランでシェフをしていたカーミーが、亡くなった兄マイケルのサンドイッチ店「ザ・ビーフ」を継ぐことになる物語。店の経営は危機的状況で、従業員も一筋縄ではいかず、キッチンはボロボロ……と最悪の状態から、カーミーの奮闘が始まる。第75回エミー賞に13部門ノミネートされた話題作で、Disney+でシーズン1(全8話)、シーズン2(全10話)が配信されている。
 
まるで厨房(ちゅうぼう)の中にいるかのような没入感のある映像、そして怒号が飛び交いまくる厨房内の超ハイカロリーな演技合戦に圧倒される本ドラマ。特にシーズン1(2022年)では、店の立て直しを図るカーミーと、彼のやり方に反対する、亡きマイケルの右腕リッチーがそれぞれの主張を大声で叫び続ける。お互いを従わせようとする怒鳴り合いの応酬は、「こんな職場イヤすぎる!」と叫びたくなるほどリアル。カーミー役のジェレミー・アレン・ホワイト、リッチー役のエボン・モスバクラック、新しい従業員シドニー役のアイオウ・エディバリーらキャストたちの演技は圧巻だ。


激動の厨房と人間の機微

本シリーズの魅力は、カーミーたちがつまずきながら店と共に成長していくところ。ドラマの尺だからこそ、一人ひとりにフォーカスが当たり、泥臭くてもわずかに前に進む瞬間が取りこぼしなく収められている。また、好戦的だが不器用な登場人物たちの心の機微が静かに丁寧に描かれ、激動の厨房との緩急が秀逸。そして、シーズン1でたまりにたまったフラストレーションが、シーズン2では昇華され、クセ強な従業員たちが、〝働くことの意味〟を見いだしていく姿に胸が熱くなっていく。
 
シーズン2には、ウィル・ポールター、ジェイミー・リー・カーティス、ボブ・オデンカーク、サラ・ポールソン、オリヴィア・コールマンと豪華キャストが登場。シーズン2の第6話での俳優陣の震えるほど強烈な演技のぶつかり合いは必見だ。
 

心がほんの少し軽くなる〝断捨離〟ムービー「ハッピー・オールド・イヤー」



「ハッピー・オールド・イヤー」©2019 GDH 559 Co., Ltd.

「ハッピー・オールド・イヤー」は、カンニングを題材にした「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」、料理人の狂気を描いたNetflix映画「ハンガー:飽くなき食への道」で主人公を演じたタイの注目株チュティモン・ジョンジャルーンスックジン主演の〝断捨離〟ムービー。U-NEXT、AmazonPrimeビデオなどで配信中だ。


 
留学から帰国したジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、自宅をデザイン事務所にリフォームするため、家にあふれるモノを捨てることを決意。しかし、親友からのプレゼントを捨てて非難されたことをきっかけに、〝断捨離〟は思いがけない方向に進んでいく。
 
全編にわたり抑揚を抑えた演出で、ジーンの感情が大きく揺れ動く場面が際立ち効果的。家を出て行った父親の思い出の品を捨てようとして母親に激怒され、ジーンが泣きながら説得するシーンは涙を誘う。また、連絡を絶った元恋人に身勝手さを指摘され、言い訳を並べるジーンの未熟さもビターに描かれている。


真っ白なシャツに清涼感

〝断捨離〟が万事を解決して成長させてくれるわけではない、「人と別れるのとモノを捨てるのは違う」というセリフの通り、一言では片づけられない人と人とのつながりをユーモラスかつ繊細に描いた力作で、人とモノの出合いをより大切にしたくなる。
 
ちなみに本作は、年越しまでの〝断捨離〟を目指す物語だが、熱帯のタイで常に真っ白なシャツ(または白いTシャツ)を着ているジーン役のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンの清涼感溢(あふ)れるたたずまいは夏にぴったり。この夏、ジーンのように〝断捨離〟をやってみたら、もしかしたら心がほんの少し軽くなるかも?
 
紹介した3作品を見ると、次の一歩を踏み出すことに希望が持てる。「ドリーム 狙え、人生逆転ゴール!」は転んでもただでは起きない心、「一流シェフのファミリーレストラン」は諦めの悪さ、「ハッピー・オールド・イヤー」はどんなことがあっても前に進むべし、といったころだろうか。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。