チャートの裏側

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2021.11.04

チャートの裏側:生きる活力を仮想空間で

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

アニメーションの「劇場版ソードアート・オンライン」の第2作がトップにきた。10月30、31日の興行収入は3億5000万円。客層はファンの若い男性中心で、優に最終15億円以上が見えた。ピンとこない人も多いだろうが、邦画のヒットアニメを代表するのは前作同様だ。

本作の中身のみに触れる。普通の女子高校生が、何気なく参加したオンラインゲームから出られなくなる。現実に戻れないのだから、これは恐ろしい。普段の生活に戻るためには、幾多の死闘を乗り越えないといけない。すでに力尽きた何人もが、現実の死を迎えている。

興味深いのは仮想空間の中、少女が次第に生きる活力を見いだしていくことだ。その具体性は続編に持ち越しだが、仮想空間が現実世界へのバネ、飛躍になっているのが面白い。バーチャルな死闘は、現実の精神の戦いとも言える。眠っていた活力が、そこから湧き上がる。

実写作品では、「老後の資金がありません!」が、この2日間で1億5000万円とまずまずだ。老後を控える50代夫婦を描く。テレビドラマで十分という意見もあろう。ただ深刻なテーマを、往年の邦画の娯楽作品のように軽々と描ききったのは潔い。館内は心地よい笑いが響いた。大女優・草笛光子のズッコケ演技が見事で、これには感動した。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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