毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.1.06
「非常宣言」
韓国が製作したスカイパニック映画だ。仁川発ハワイ行きの旅客機で無差別バイオテロが発生。大勢の乗客が致死性の高いウイルスに感染してしまう。この惨劇に巻き込まれた飛行機恐怖症の男性ジェヒョク(イ・ビョンホン)は幼い娘を守るために奮闘し、地上では妻の安否を心配する刑事イノ(ソン・ガンホ)が真相究明に奔走する。
空と陸に配された2大トップスターに加え、「シークレット・サンシャイン」の実力派女優チョン・ドヨンが空港で対処にあたる大臣を演じるのだから、見応えは保証されたようなもの。行き場を失った旅客機が日本への着陸を打診したり、あわや撃墜、墜落の危機に見舞われたりするスリリングな展開をつるべ打ちし、ヒューマンドラマも情感たっぷりに描出。このジャンルの定番の要素を網羅しつつ、水準以上のテンションがみなぎる映像世界に引き込まれる。韓国映画の総合力の高さを改めて実感させられる娯楽大作である。ハン・ジェリム監督。2時間21分。東京・丸の内ピカデリー、大阪・梅田ブルク7ほか。(諭)
ここに注目
適材適所の大スターたちの中で、ドラマ「ミセン 未生」などでおなじみのイム・シワンが怪しい青年を演じ、存在感を示した。航空機の機体がダイナミックに360度回転するシーンもあり、没入感も相当なもの。グラグラと揺れる映像も多いため、乗り物に酔いやすい人はご注意。(細)