ジャリカットゥ 牛の怒り

ジャリカットゥ 牛の怒り

2021.7.15

ジャリカットゥ 牛の怒り

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

暑い日には熱い映画を。インド発、超高熱量の怪作だ。

南インドの村にある肉屋のアントニがナタを振り上げると、水牛が逃げ出した。牛は村人を突き飛ばし銀行に飛び込んでメチャクチャにし、畑を荒らして走り回る。

牛が凶悪凶暴とか、追っ手が次々と血祭り、といった展開ならモンスター映画だが、牛は1頭、逃げるだけ。物語が進むうちに牛は次第に脇役に追いやられ、異様さを増していくのは追っ手の方だ。

村の男たちばかりでなく近隣からも人が集まり、アントニと因縁のある乱暴者のクッタッチャンが、討伐のために呼び戻されて熱気は一段と高まる。夜になるころには大群衆となり、たいまつを掲げてジャングルを埋め尽くす。

誰もがやたらと怒る、怒鳴る、叫ぶ。ジャングルを疾走する人々をカメラがダイナミックに追い、おどろおどろしい音響が伴走。画面を埋め尽くす群衆の欲望と怒りは、正体不明の熱狂の渦となる。

人間の原初的な醜さとか獣性といった主題もさることながら、あまりの迫力に呆然(ぼうぜん)である。リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督。1時間31分。東京・シアター・イメージフォーラム(17日から)、大阪・シネ・ヌーヴォ(9月9日から)ほか。(勝)