再会の奈良  © 2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

再会の奈良 © 2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

2022.2.03

再会の奈良

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2005年。中国残留孤児の父親が再び中国に帰ってからも、娘のシャオザー(イン・ズー)は清水初美として奈良で暮らしている。彼女のもとに中国からやって来たのは、おばあちゃんのような存在の陳彗明(ウー・イエンシュー)。日本にいるはずの中国残留孤児の養女からの連絡が途絶え、彼女を捜すために訪日したという。この2人に、ひとり暮らしをしている元警察官の一雄(國村隼)が加わり、養女捜しの旅が始まる。

河瀬直美とジャ・ジャンクーがエグゼクティブプロデューサーに名を連ね、監督を務めたのは1982年生まれのポンフェイ。冒頭で中国残留孤児の運命をアニメでわかりやすくまとめ、若い世代にもこの歴史を知ってほしいという思いが伝わる。おばあちゃんが精肉店で羊の鳴き声をまねする笑える場面など、言葉や国境を超えたコミュニケーションと愛情が全編に。それだけにやるせないエンディングには言葉を失い、監督からの問いかけがずしりと胸に残った。1時間39分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

異論あり

養女捜しのてんまつが電話の声一つではあまりにあっけなく、いたたまれない。ましてや、中国残留孤児の存在がピンとこない世代には、戦争の爪痕の深さが響かないのではないか。ユーモアをちりばめて3人の道中を映すのもいいが、焦点をぼかすことになる気がしてならない。(鈴)

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