毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.2.03
大怪獣のあとしまつ
人類を恐怖に陥れた大怪獣が突然死んだ。全長380㍍、倒れた状態の高さは155㍍。死体は腐敗が進み、ガス爆発の危険が高まる。首相の西大立目完(にしおおたちめかん)(西田敏行)ら政治家はおろおろするばかりで、有効な解決策を見つけられない。爆発が迫る中、首相直轄の特務隊隊員、帯刀(おびなた)アラタ(山田涼介)に死体の後始末が命じられる。
数多くの怪獣映画は、怪獣を倒せばハッピーエンド。その後、死体はどう処理されていたのかという着眼点が新しい。しかも、今回はゴジラをしのぐ邦画史上最大級のサイズだ。アラタら現場の奮闘が描かれる一方、大臣たちは責任を押し付け合ったり怪獣に「希望」と名付けたり、やることなすこと間が抜けている。その間抜けぶりを、西田らベテランが大真面目に演じているのが笑いを誘う。
物語はドタバタ感を拭えず、下品なギャグが上滑りするシーンもあるが、そういうバカバカしさもひっくるめて何も考えずに楽しみたい。三木聡監督。1時間55分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほか。(倉)
異論あり
いわば「シン・ゴジラ」その後。暴走して人類を蹴散らした怪獣が、息絶えてなお汚染物質をまき散らす。10年たっても膨大な廃棄物に手を焼く日本の現状の風刺だろう。とはいえオフビートな笑いが身上の三木監督、全体の調子はゆるめ。ビシッと毒を決めてほしかった。(勝)