9月3日東京・TOHOシネマズ六本木にて 長谷川直亮撮影

9月3日東京・TOHOシネマズ六本木にて 長谷川直亮撮影

2022.9.03

「見たら幸せになります。みんなの好きを大切に」 「さかなのこ」公開記念あいさつ 

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

勝田友巳

勝田友巳

「さかなのこ」の公開記念舞台あいさつが3日、東京・TOHOシネマズ六本木で行われた。土曜日の朝1回目だったが、上映したスクリーン7はほぼ満席。沖田修一監督、原作者のさかなクン、主演ののん、出演した磯村勇斗、井川遥、岡山天音が登壇した。
 


 

「お魚を意識」鮮やかドレスののん

それぞれ、映画にちなんだ衣装で登壇。主人公ミー坊を演じたのんは、「お魚を意識した」という鮮やかな黄色の流れるようなラインのドレス。磯村は「海のこけをイメージした」という緑のスーツ、岡山は魚柄のTシャツ。沖田監督の胸には、さかなクンの母親に贈られたというハコフグカラーのコサージュが。それぞれが映画について、役について語った。

 
磯村と岡山は、不良高校生役。磯村演じる総長はミー坊の通う高校の不良のリーダー、岡山は総長のライバル、カミソリ籾(もみ)役だ。といっても不良たちは、おっかないよりかわいらしくて、憎めない。

 
カミソリ籾は、学ランの下に網シャツ姿。岡山は「衣装合わせで用意されていた。ビジュアルにインパクトがあって、クセのあるキャラにしました。楽しかったですよ」。胸元からカミソリを取り出す仕草は、細かく練習したとか。

 
総長を「愛すべきおバカさん」と呼ぶ磯村も「楽しかった」。「沖田監督を笑顔にさせたいと。監督が笑ってくれるのがうれしかった」と言えば、沖田監督も「ゲラゲラ笑ってました」。
 

「ミー坊はみんなのヒーロー。同志のつもり」

井川は、魚が好きなあまり破天荒なミー坊をとがめず、後押しする母親ミチコ。「こういう母親になりたいと思いながら演じていました。子育てしてると先回りして、危ない、こっちの方がいいと自分の経験から予防線を張りがちで、見守ることはなかなかできない。ミチコはあったかいし、だからこそさかなクンが好きを追求できたんでしょう」

 
のんは「さかなクンは老若男女のヒーローで、ミー坊もみんなのヒーロー。かっこいいと思いました。好きなことをやりたいという思いを原動力にがんばっているところにシンパシーを感じて、一方的に同志みたいな気持ちです」。海に飛び込む場面も「全部自力です」。
 
映画のモデルとなったさかなクンの元に映画化の話が持ち込まれたのは5年前という。完成した映画は、映画にも登場する幼なじみのヒヨ、恩師の鈴木先生、母親も鑑賞した。「すギョいねーって。夢と思ってフワフワしてます」とさかなクン。

 
不良たちをはじめ、映画に悪人が出てこない。「さかなクンの人生をモデルに作っていて、悪人は必要なかった」と沖田監督。不良たちのけんか場面も「ヤンキーのけんかが、平和で幸せにしか思えなくて」。本読みの時に、映画の音楽を担当したパスカルズのかわいらしい曲を流してイメージを伝えたという。岡山は「某不良映画のイメージもあったけど、本読みでこの曲を聞いて楽しみになりました」。

 

「全シーン楽しかった。全キャラをハコ押し!」

MCから「作品中の推しキャラは?」とお題が。
 
岡山は不良の一人、三河悠冴が演じた青鬼。バタフライナイフを扱う手つきこそ鮮やかだが、一言もセリフがない。「セリフがないのに本読みにも来て。ナイフさばきがかっこよかった。沖田監督の愛着が感じられます」。本番中に突然、アドリブで長広舌をふるったとか。「こんな声だったんだ」と沖田監督もびっくり。ただその場面、カットされているそうだ。
 
磯村は、三宅弘城が演じたミー坊の父親ジロウ。海でミー坊が捕まえたタコを、「こうするとおいしくなるんだ」と思い切り地面にたたきつける。「大笑いしました。元々大好きなんです」。沖田監督は「この映画唯一の暴力シーンです」。
 
井川は「総長」と答えて磯村を恐縮させた。「声が大きいのにハートはそんなに大きくない。温かい不良だなと、完成した映画を見て一人でクスクス笑ってました」
 
のんは「ほんと難しい」と前置きして「ハコ押しです」。「みんなが幸せだし、演技も全シーンが楽しかった。全員推しです」
 

ミー坊はイットウダイ キラッキラッでかわいい

最後にさかなクンからのんに、ハコフグ帽をプレゼント。さらに、さかなクンが楽屋で即興で描いた、キャラクターをイメージした魚のイラストも。さかなクンの解説付きで披露した。
 
ミー坊はイットウダイ。「英語で『リス魚』っていうくらい、キラッキラッで、かわいらしい顔してるんです」。ミチコはマンボウ。「温かく見守るおおらかさ。ドクターフィッシュと呼ばれていて、小魚が体をこすりつけて病気を治すんです」
 
総長は「日本の磯で一番大きい」というクエ。「1・2メートル、50キロになるんですよ」。カミソリ籾はブリモドキ。「クエのライバル。大きい魚を誘導するので、パイロットフィッシュとも呼ばれます」。沖田監督にはショウキハゼ。「コロッコロッとしてて、かわいいんです。監督が撮影中におひげをはやしていて、そっくりでした」。即席お魚教室の一幕。
 
締めくくりはのんの一言。「見た人全員が多幸感に包まれる映画です。みんなの好きを大事にしてください。あなたの映画になりますように。ギョギョギョ」

さかなのこ

お魚が大好きな小学生“ミー坊”は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。お魚を、毎日見つめて、毎日描いて、毎日食べて。他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、母親はミー坊を信じて応援し、背中を押し続けるのだった。高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、町の不良ともなぜか仲良し、まるで何かの主人公のようにいつの間にか中心にいる。やがて1 人暮らしを始めたミー坊は、思いがけない出会いや再会の中で、たくさんの人に愛されながら、ミー坊だけが進むことのできるただ一つの道にまっすぐに飛び込んで行くーー。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
ひとしねま

長谷川直亮

毎日新聞写真部カメラマン

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