毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.4.22
ブックセラーズ
世界最大規模のニューヨークブックフェアに集まる書店員、ディーラー、コレクターたちにカメラを向けたドキュメンタリー。老舗書店を引き継いだ3姉妹、革製本だけを扱うディーラー、作家、フラン・レボウィッツら個性豊かな人物が登場し、「不思議の国のアリス」のオリジナル手稿やオルコットが偽名で書いたパルプ小説など貴重な書物が次々に紹介されていく。
ベースはもちろん本への愛情だが、エピソードの多彩さにうなるばかり。デジタルの台頭で業界の状況は甘くはないが、若手のブックセラーが語る「私はアイデアがいっぱいあるから大丈夫」という言葉が頼もしい。美しく並んだ本の姿と物語を愛情たっぷりに捉えたこの映画全体から、紙の本を開いた時の香りが漂ってくるかのよう。本の森を探求する楽しさをたっぷり味わわせてくれる作品であり、偏愛するものに出合ってしまった人たちの情熱に触れられるドキュメンタリーだ。D・W・ヤング監督。1時間39分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)
ここに注目
貴重な古書にまつわるウンチクから、希少本コレクターたちに共通するユニークな外見の特徴まで、多彩なトピックが飛び出すインタビューが実に愉快。所狭しと本が並ぶ書店、書庫、書斎といった空間の魅力もカメラに収められ、本好きならば視覚的にも楽しめる1本だ。(諭)