プロミシング・ヤング・ウーマン

プロミシング・ヤング・ウーマン

2021.7.15

プロミシング・ヤング・ウーマン

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

優秀な医大生だったが、ある出来事をきっかけに中退し、今はカフェで働くキャシー(キャリー・マリガン)。バーで酔ったふりをして、誘ってきた男たちに制裁を加える日々を送っていた。そんな彼女の前に、大学の同級生で小児科医になったライアン(ボー・バーナム)が現れる。

〝前途有望な若い女性〟が、なぜこの生き方を選んだのか。男と女、加害と被害を巡る壮絶な復讐(ふくしゅう)劇とともに、秘密が明かされていく。女優としても活躍するエメラルド・フェネルが自らの脚本を監督し、今年のアカデミー賞脚本賞に輝いた。先読みできない展開で見る者を引き込む脚本はもちろん、カフェのカラフルな色合いやキャシーの自宅の華美なインテリア、ポップな衣装まで細やかに計算し、フェネルがお見舞いする強烈すぎるパンチ。鑑賞後には胸を刺すような痛みと奇妙な爽快感が同時に訪れる。賛否両論を呼びそうだが、今の時代に生まれるべくして生まれた傑作として支持したい。1時間53分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

報復に人生をささげるキャシーの姿は、すさまじくも物悲しい。憎しみの連鎖を断ち切るのは「許し」だと説かれても、納得できないことがある。キャシーの執念に共感する半面、それを貫いてたどり着いた先にも救いはない。ポップな娯楽作に込められた女性の怒り、深い。(勝)