わたしは最悪。© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST -  SNOWGLOBE -  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

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2022.7.01

わたしは最悪。

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)は医学生から写真家、作家などと仕事を変え、一緒に暮らす恋人で漫画家のアクセルは身を固めたがっている。あるパーティーに紛れ込んだユリヤは同世代のアイヴィンに出会い、新しい恋愛に身を委ねようとする。

20代後半から30代にかけてのユリヤ。声高ではなくごく自然に、結婚や出産、子育てに縛られない生き方をたぐろうとしている。仕事を度々変えるのも、恋愛のパートナーが代わるのも、肩肘張った意志というよりも自分らしい自由な生き方をしたいという思いからだ。女性性や恋愛からの抑圧、リアルな現実との間で生きる現代女性の姿をデンマーク生まれのヨアキム・トリアー監督が映し撮った。

男性たちは社会や家族などの既成概念にとらわれた生き方に委ね、ユリヤとズレが生じていく。後半のユリヤとアクセルの長い会話も含め、生き方の選択を真摯(しんし)に描いて心に響くドラマに仕上がっている。カンヌ国際映画祭女優賞。2時間8分。東京・Bunkamuraル・シネマ、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

ふとした瞬間に心の中のポジティブ/ネガティブのスイッチが反転し、極端な行動に走るユリヤの人物造形が面白い。ロマコメとウディ・アレン風の心理分析ドラマを混ぜ合わせ、時間が止まったようにオスロの街がフリーズする斬新なイメージを創出したトリアーの才気が光る。(諭)

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