©私の卒業第5期製作委員会2024

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2024.6.13

大人になった私はもう「卒業」とは無縁だと思っていた「私の卒業 こころのふた〜雪ふるまちで〜」いくつになっても一生青春の中で生きていける

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

波多野菜央

波多野菜央

自分の人生や街に向き合う姿

「私の卒業 こころのふた〜雪ふるまちで〜」この物語の主人公は、卒業を控えた高校3年生たち。新潟県新潟市と燕市を舞台に、新潟市を代表するふるまちの芸妓(げいぎ)や燕市の金型など、その地に根付く文化や技術に触れながら彼らの青春を描いていく。進路、夢、恋愛、家庭内の問題などのそれぞれが抱える葛藤に加えて、人口減少という地方都市が直面する課題にも切り込む。若者が真っすぐに自分の人生や街に向き合う姿がとてもまぶしくて美しく、最後まで胸を打たれ続けた。


 

あの時の胸のざわめきや素直な気持ち

高校3年生といえば、きっと多くの人が人生の大きな岐路に立つ、もしくは立った特別な時期だろう。学生服に身を包む残りわずかな時間。卒業後の希望に満ちあふれながらも、進路選択や人間関係などに悩むことも少なくない。個人的に振り返ってみても、高校生活や大学受験での経験は、今の私を形成するに欠かせない濃密なものであった。一歩を踏み出す不安と、未来を切り開いていくワクワクが渦巻く中で選んできた道は、シンガー・ソングライターとして活動している今に確かにつながっている。大人になり日々に追われる中で忘れてしまいがちな、あの時の胸のざわめきや素直な気持ちを思い出させてくれる、みずみずしさ満載の作品だった。
 

才能やたぎる想いを引き出そう

若手俳優の登竜門として知られるプロジェクト「私の卒業」の第5弾となる今作。なんといっても、作品を通して感じるフレッシュなエネルギーが印象的だ。ワークショップ型のオーディションを経て選ばれた22人のキャスト中16人が映画初出演というのも、その理由のひとつだろう。芸能事務所への所属や非所属に関わらず集まった俳優を志す若者たちと、その才能やたぎる思いを引き出そうとする製作陣による化学反応が、見ているこちらの心にも火をともす。

 

夢を追いかけるパワーと情熱

本編に併せてYouTubeで公開中のドキュメンタリー映像の視聴もおすすめしたい。もちろんオーディションには選考があり、最後の22人に選ばれない人もいれば、希望の役につくことができない人もいる。厳しい現実に直面しながらも切磋琢磨(せっさたくま)し高めあう彼らの姿からは、割り当てられた役を演じるだけではなく、作品をより良いものに作り上げようとする、俳優としてのプライドと心意気を感じた。そこには映画出演経験の有無は関係なく、夢を追いかけるパワーと情熱がただただ集結していた。
 

我が街と作品を重ねずはいられなかった

舞台となる地域と連携し、伝統的な文化や素晴らしい技術をフィーチャーしている点も、このプロジェクトの重要な柱のひとつであるという。作品を通して地域活性につなげるアプローチは、北九州市を拠点に活動する私からしても特に注目するポイントだった。北九州市も人口減少や若者の流出などの問題を抱える都市の一つであり、我が街と作品を重ねずはいられなかった。ネットを通して世界中がすぐつながることができ、どこにいても発信ができる時代ではあるが、それと同じだけ、その場所にしかない景色や歴史、残していくべき魅力があると思う。この地だからこそ創ることができるものは何だろうか? それを追求していくことこそが、アートや芸術が地方創生につながる第一歩であると改めて感じた。

思入れのある街を思い浮かべる

俳優や製作陣の熱意とその地域を愛する人たちのパッションが混ざったとき、創作物や作品はより社会的意義を高め、メッセージの厚みを増す。この映画をきっかけに、きっと多くの人が故郷や思い入れのある街を思い浮かべるだろう。それだけでも、地方創生の一端を担っている。
 

 いくつになっても一生青春

大人になった私はもう「卒業」とは無縁だと思っていたが、どうやら、そうではなかったようだ。自分の弱い部分や殻を破りたい気持ち。隠している本音や抱えている悩み。そんな自身の「こころのふた」に立ち向かうことで、私たちは何度も新しい自分に出会うことができる。現役高校生には、この作品のメッセージがダイレクトに響くであろうことが羨ましい。しかし、「卒業」と「出会い」を繰り返し成長できる私たちは、いくつになっても一生青春の中で生きていける。そんな勇気と、地元を愛する気持ちを湧き起こしてくれる一作だった。

ライター
波多野菜央

波多野菜央

はたの・なお
1996.10.4 生まれ
北九州発シンガーソングライター 。エネルギッシュなステージングと持ち前の元気の良さは これ以上にない武器 。ストレートかつ表現にこだわった歌詞中域から低音が特徴的な説得力のある声は現代の音楽シーンで存在感を放つ。明るいキャラクターとのギャップで聞き手の心を掴み北九州を中心に イベント、TV ラジオ、CMで活動中 。
波多野菜央のプロフィール|VIRAL(バイラル)

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