毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.9.16
ヘルドッグス
原田眞人監督が「関ケ原」「燃えよ剣」に続いて岡田准一と組んだ犯罪アクション。深町秋生の「ヘルドッグス 地獄の犬たち」が原作。殺人を防げず責任を感じ、被害者に代わって犯人に復讐(ふくしゅう)した元警官出月(岡田)が捕らえられ、潜入捜査官として暴力団に送り込まれる。兼高と名前を変えて暗殺部隊でのし上がり、トップに接近する。
見どころは岡田が振り付けも担当したという、数々のアクション場面。相棒役の坂口健太郎と共に、動きが実戦的でクール。シネフィルの原田監督らしく古今のアクション映画を参照しつつ、速い、キレがいい。かつ重さと質感も忘れず曲芸的見せ物にとどまらない。潜入捜査官ものの定番「バレるかも」危機と「ミイラ取りがミイラ」展開も存分に織り交ぜる。
異質なのは兼高の、身内に示す人間味と、スポーツ感覚で敵を殺す非情さのギャップ。徹底したプロ意識なのか怪物的本性なのか、不気味な影が濃い。好き嫌いが分かれそう。2時間18分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほか。(勝)
異論あり
俳優陣のアクの強いなりきりぶり、全場面が入念に設計された画作りとアクションなど、ノワールな映画濃度はかなり高い。その半面、主人公が復讐する動機の弱さ、潜入捜査の目的の曖昧さがスリルをそいでいる。登場人物の相関関係の複雑さ、セリフの聞き取りづらさも難点。(諭)