ひとしねま

2022.7.01

チャートの裏側:想像広がる日韓の壮挙

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

なかなかの健闘ではないか。韓国映画の「ベイビー・ブローカー」だ。最初の3日間の興行収入は1億7000万円だった。10億円近くは視野に入った。赤ちゃんポストを題材にした。赤ん坊の養子縁組で金を稼ぐ男2人に若い母親がからむ。ロードムービーというスタイルをもつ。

健闘の要因は三つあるとみる。まず、韓国人俳優の人気だ。これは女性層の集客につながった。是枝裕和監督が演出を手がけたことも大きい。「万引き家族」などに魅了された人たち、監督のファンや比較的高齢層が足を運んだ。カンヌ国際映画祭での男優賞効果もあるだろう。

本作で特筆すべきは、日本の監督が韓国人のスタッフ、俳優で作り上げたことだ。日本映画及び日本の映画人は、国際性が乏しいとよく言われる。だから、海外進出が望ましいという声が上がる。これは、経済面と活躍の場、質的側面などを意味する。これが生半可ではできない。

是枝監督は、それをやってのけた。すごいことだ。そこを前提に中身について考える。テーマの切実さとは、いかなる作劇術から伝わるのかと。本作は、人間関係における対立軸をことさら強調はしない。それが狙いだ。ではもっと、対立軸鮮明のシビアな話の展開だと、その伝播(でんぱ)力はどうなるのか。想像力が広がるばかりの作品なのである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

ベイビー・ブローカー

借金取りに追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と赤ちゃんポストがある施設の職員ドンス(カン・ドンウォン)は、赤ちゃんポストに預けられた子どもを横取りして売りさばくブローカーだ。ある夜ソヨン(イ・ジウン)が置き去りにした赤ん坊を連れ去るが、ソヨンが不審を抱いたことから仲間に引き入れ、一緒に里親探しの旅に出ることになった。人身売買の現行犯逮捕を狙う刑事スジン(ペ・ドゥナ)はひそかに後をつける。

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