毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.10.07
「メインストリーム」
米ロサンゼルスのバーで働くフランキー(マヤ・ホーク)は、クリエーターとして成功を夢見る若い女性。ある日、彼女はリンク(アンドリュー・ガーフィールド)という青年の型破りな話術に魅了される。フランキーの男友だちを加えた3人は本格的な動画制作に乗り出し、SNSで大反響を得るが、リンクの暴走が炎上騒ぎを招いてしまう。
ソフィア・コッポラのめいにあたるジア・コッポラ監督の長編第2作。ネット上のカリスマとして脚光を浴びる青年の栄華と転落を、SNS業界の内幕とともに描く。SNS隆盛の現代におけるメディアと個人の関係性、過激な動画に熱狂する大衆の危うさを、絵文字などのポップな視覚効果をちりばめて映像化。ガーフィールドのテンションの高い怪演にも圧倒される。その半面、いろんな要素を慌ただしく詰め込みすぎて、実質的な主人公のフランキーが脇に追いやられ、漂流する若者たちの青春映画の味わいが薄まってしまったことは否めない。1時間34分。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)
異論あり
SNSの暴走はこれまでにも映画化され、成功と転落の過程、結末もほぼ予想の範囲内。ネット社会の危うさや承認欲求、受け手側の問題もうなずくことしきりで、新味に欠ける。リンクやフランキーが魅力的に見えないのは、デジタルに疎いからだけではなさそうな気が。(鈴)