「アナログ」 ©︎2023「アナログ」製作委員会 ©︎T.N GON Co., Ltd.

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2023.10.06

「アナログ」 じわじわと心にしみるラブストーリー

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

手作りの模型や手描きのイラストにこだわって仕事をしているデザイナーの水島悟(二宮和也)。ある日、内装を手がけた喫茶店「ピアノ」で美春みゆき(波瑠)と出会い、ひかれていく。携帯電話を持たないみゆきと毎週木曜日に「ピアノ」で待ち合わせをするようになるが、悟がプロポーズをしようとした日、彼女は姿を現さなかった。

ビートたけしの恋愛小説を、ドラマ「赤めだか」でも二宮とタッグを組んだタカハタ秀太監督が映画化。連絡手段を持たない2人が都会のエアポケットのような場所で心を通わせていく過程にはもどかしさよりも心地よさが漂い、海辺の糸電話での会話シーンなど〝アナログ〟な美しさも忘れがたい。

みゆきの過去が明かされる、やや駆け足で劇的な終盤の展開はファンタジー色が強いが、バランスを取る役割を果たしているのが悟の友人を演じた桐谷健太と浜野謙太。長回しで撮影された気の置けない男友達同士のおしゃべりが、この映画に程よいユーモアと現実感を吹き込んでいる。2時間。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

糸電話の懐かしさ、そば打ちの粋、焼き鳥屋の和み……。若者から中高年まで琴線に触れる映像が、クラシックなラブストーリーと共鳴し、じわじわと心にしみる。港岳彦の脚本は、純度の高い恋心の芽生えから愛情を育んでいく流れを、よどみなく確かな感触で包む。気恥ずかしさは軽々と越えている。(鈴)

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