「BEEF/ビーフ」 ©2023Netflix Inc.

「BEEF/ビーフ」 ©2023Netflix Inc.

2023.5.19

配信チェック:「BEEF/ビーフ~逆上~」 争いの先にある着地点は

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

作家性を尊重した良質な作品を生み出す配給・製作会社として日本でもおなじみとなった米国のA24。今年のアカデミー賞を席巻した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を世に送り出した、A24が手がけたシリーズ「BEEF/ビーフ~逆上~」の舞台は、米ロサンゼルス。〝エブエブ〟に続き、アジア系移民が主人公の多様な物語がごく当たり前に描かれる時代になったことを証明する作品になっている。

貧しい工事業者のダニー(スティーブン・ユアン)がホームセンターの駐車場で衝突しそうになったのは、裕福な起業家のエイミー(アリ・ウォン)。ここから始まった小競り合いが、終わりの見えない仕返し合戦へと発展していく。

社会的にはまるで接点のない2人だが、内側に不満と怒りが充満しているという共通点がある。子供じみた復讐(ふくしゅう)から浮かび上がるのは、家族愛、夫婦の関係、差別や宗教といった普遍的で切実な問題だ。最終話では争いの先で境界線が奇妙に溶け合い、人生において最も大切なものとは?という問いへと着地していく。

それらをとんでもない勢いで見せ切った監督はイ・サンジン、ジェイク・シュライアー、「37セカンズ」のHIKARI。全10話。ネットフリックスで独占配信中。(細)