「ブルーピリオド」

「ブルーピリオド」©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会

2024.8.09

時代の目:「ブルーピリオド」 努力と汗の〝スポ根〟乗りで

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

仲間と夜ごと遊び回りながらも成績優秀な八虎(眞栄田郷敦)は、周囲に合わせてそつなく生きるだけの日常を持て余している。美術の時間に、徹夜で遊んだ朝の渋谷の青い風景の絵を描いて初めての手応えを感じ、東京芸大への進学を決意する。

人気漫画の実写映画化。受験の620日前から日付を刻み始め、八虎がゼロから油絵の技術と、対象を捉える感覚を磨いていくさまを刻々と追っていく。美術部の先輩と出会い、美大予備校でライバルと切磋琢磨(せっさたくま)し、絵画の奥深さと魅力にのめり込んで課題を乗り越えていく。その熱意をテンポ良く見せるし、八虎の絵の良さも分かりやすく示して画面は弾む。

しかし、2時間で約2年を詰め込んだだけに枝葉はばっさり。憧れの先輩も予備校のライバルも、書き割りのように存在感が希薄。原作ファンには不満かも。そもそも「絵を描きたい」という目標は、東京芸大に行かないと実現できないのか?と疑問もチラリ。芸術とは、才能とはと真理を問うより、芸大合格という目標に向かって一直線の、ノウハウもの風なのが現代的。努力と汗の「スポ根」乗りで楽しめる。萩原健太郎監督。1時間55分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(勝)

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