ひとしねま

2024.4.19

チャートの裏側:ラスト〝つかみ〟に ざわざわ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

いつも通りの映画館の光景ではあった。ラスト、ある人物の正体が明かされて終わる。場内に照明がともるや、至るところでざわつきがあった。ただ、このざわつき感は、全く意外で強烈な印象を与えるラストの「つかみ」が大きいのではないか。いつもと違う感覚だった。

「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」である。3日間の興行収入は33億5000万円。すさまじいスタートになった。3日間ではシリーズ新記録だが、数字だけではわからないものもある。この出足は明らかに、これまでの実績の上に立つ。では、中身はどうなのか。

率直な意見を言う。まず、登場人物が多過ぎる気がした。原作やドラマを熟知していないと、入り込みづらい。それに絡んで、コナンと怪盗キッドの活躍の場を増やしてほしかった。キッドの飛翔(ひしょう)姿中心に、スペクタクルシーンも強化する。それだとラストがさらに生きた。

「名探偵コナン」は、ここ数年で飛躍的に数字を伸ばした。この伸びは、原作ファンなどの中心層だけでは達成しない。話題性や口コミによって、映画館に足を運ぶ観客は多い。その層に向けた話の組み立てを重視してほしい。根っからのファンをひき付けつつ、広範囲の客層への目配りをする。難しいかじ取りだが、「風物詩」には、そのような意味合いがあると思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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