ひとしねま

2023.6.16

チャートの裏側:強固なブランドの行方

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

聞き慣れた心地よい曲調に乗って、夢の国のお城が登場する。これにディズニー100の文字が重なる。ジーンとしてしまう。いつもながら、ワクワクするディズニー映画の導入部だ。それは長きにわたって築き上げられてきた。ただ強固だったそのブランド性が今、揺れている。

同社は、新型コロナウイルスまん延以降、米国のメジャースタジオの中で、いち早く配信へ軸足を移した。劇場公開予定の作品を配信のみにした。劇場公開と配信を同時期に行った。配信事業と映画との連動性を志向したのだが、興行へのマイナス面が大きくなってきた。

そこに登場したのが、いかにも同社らしい実写版の「リトル・マーメイド」だ。3日間の興行収入は7億1000万円。大ヒットは間違いないが、この程度かという思いもある。どうしても、コロナ禍前の破竹の勢いの頃が頭にある。その時期と比較するといささか物足りない。

ディズニーは本作に限らず、キャラクターや物語設定などの変更を進めている。それに伴い、中身自体も変化してきた。重要な試みだが、問題は観客の受け取り方だ。興行に欠かせなかった従来のディズニーブランドはどうなるか。人々の体内に根づいてきたブランドイメージは、どう変わっていくのか。「リトル・マーメイド」では、まだ明瞭な答えは出ていない。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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