チャートの裏側

チャートの裏側

2024.12.13

チャートの裏側:「懐かしさ」だけでなく

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

いわば、テレビドラマの実写映画化の王道、直球型作品だろう。「劇場版ドクターX」だ。スタート3日間の興行収入は約6億円。大ヒットだが、圧倒的な知名度からすると、もっと欲が出る。客層に理由があろう。ドラマの視聴者同じく、どうしても年齢層が高くなる。

今年のテレビドラマの実写映画化作品には一つの傾向があった。ドラマの俳優陣、シチュエーションをそのまま引き継ぎ、新展開の劇場版にする形ではない。ドラマから派生しているが、中身を大幅に変える。「ラストマイル」と「室井慎次」2部作が、その顕著な例だった。

「ドクターX」は違った。だから、ある思いが忍び寄ってくる。去り行く人気テレビドラマの象徴的な劇場版ではないかと。長期にわたって高視聴率を誇り、それゆえに多くの人が知っている。そのようなドラマが少なくなってきている。映画「ドクターX」はどこか懐かしい。

作り方は違うが、「ドクターX」と「室井慎次」に共通している点があった。かつてのテレビや映画のシーンが流れることだ。ここが、作品の中身を超えて心に迫ってくる。月日がたち、俳優たちは年を重ねた。見る側もまた、同じだ。観客の年齢が上がるのは致し方ない。懐かしさも映画の一つの武器だが、若い層を視野に入れた新形態のドラマ映画も待望されよう。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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