チャートの裏側

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2024.9.06

チャートの裏側:驚きのオールスター登場

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

台風10号が列島を直撃した。停電に見舞われて営業ができなくなったシネコンもあり、映画興行にも影響が出た。徐々に通常営業に戻っていく中、やはり強いなと感じたのが、2週目を迎えた「ラストマイル」だ。10日間で興行収入20億円を超え、45億円以上も視野に入る。

テレビ局が製作の主体を担うが、よくあるドラマ自体の劇場版ではない。かつて放送された二つのドラマの設定、俳優陣を生かしつつ、全くのオリジナルの作品として製作された。映画の本筋の話に、二つのドラマが混在している。この作り方が関心を呼び起こしたようだ。

ドラマに出演していた主役級の俳優が、次から次に登場したのには驚いた。混在の成果の一つがこれで、懐かしい響きがある「オールスター映画」という言葉を思い出した。とくにドラマつながりと見られる観客たちには、こたえられないだろう。「仕掛け」の勝利である。

話の展開が、なかなか挑戦的だった。世界規模を誇るショッピングサイトが狙われる。巨大組織のさまざまな問題点が浮き彫りになる。サスペンスと人間劇が、見事に調和していく。このほどあいが、本作の真骨頂だ。「社会派」娯楽大作と言っていい。製作スタイルは現代調だが、作品の根幹に邦画の伝統的な肌触りがあるのがうれしい。サプライズ大ヒットである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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