「美食家ダリのレストラン」

「美食家ダリのレストラン」©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022

2024.8.16

「美食家ダリのレストラン」 マジカルなスペイン映画

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1974年、フランコ政権末期のスペイン。バルセロナを追われ、海辺の町カダケスにやって来た料理人の兄弟フェルナンド(イバン・マサゲ)とアルベルト(ポル・ロペス)。2人はサルバドール・ダリを愛するジュールズ(ジョゼ・ガルシア)がオーナーを務めるレストランで新しい料理を生み出していく。

もしも三つ星レストラン、エル・ブジの料理長、フェラン・アドリアとダリが同時代に生きていたら?という大胆な発想から生まれた作品。とにかくダリにレストランを訪れてほしいというとっぴなオーナーをはじめ、癖が強いキャラクターばかり。料理人の挑戦のみならず、家族の愛に友情、恋が入り乱れ、何でもありの盛り合わせのような一本になっている。

カオスな展開にあっけに取られる瞬間もありつつ、柔らかい時計などダリのオブジェが置かれた海辺のレストランの風景や、目にもおいしそうな料理の数々を楽しむうちに、心が軽くなっていくマジカルなスペイン映画だ。監督はエル・ブジのドキュメンタリーも手がけているダビッド・プジョル。1時間55分。東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田ほか。(細)

ここに注目

野心や嫉妬、固執などが時に大きく表に現れるものの、どの人物にも気の抜けたようなおかしさがあり、地中海の風と光に溶け込んで柔らかな物語を生み出した。ダリは崇拝のアイコンに過ぎず、料理の美しさもさることながら、人を慈しむ心があふれ出す味付け。鑑賞後の爽快感も格別だ。(鈴)

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