毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.12.06
「フード・インク ポスト・コロナ」 巨大食品メーカーの貪欲さに戦慄
会社の利益を優先し、消費者の健康をおざなりにするアメリカの食品業界。その実態に迫った記録映画「フード・インク」(2008年)は米アカデミー賞候補になり、日本でも話題を呼んだ。今回の続編でも有名なグローバル企業の商品をやり玉に挙げ、新たな問題を提起する。
低賃金で搾取される移民労働者、衰退する個人農家の苦境など論点は多岐にわたる。なかでも血糖値が高めの筆者が思わず見入ったのは、糖尿病などの慢性疾患の原因になるとされる〝超加工食品〟の問題だ。スナック菓子や清涼飲料水がその代表例だが、現代の進化した食品加工技術は、いかなる味や香り、おいしそうな見た目も作り出せる。ところが人工甘味料や合成香料といった添加物は、消費者に商品を必要以上に買わせ、おまけに脳の錯覚を引き起こして大量に食べさせるという。巨大食品メーカーの何たる貪欲さ。
劇中では、持続可能な食品システムを模索する生産者や政治家の地道な試みも紹介される。恐ろしくもタメになる一作だ。ロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド監督。1時間34分。東京・新宿シネマカリテ、大阪・テアトル梅田ほか。(諭)
ここに注目
巨大企業の論理や搾取、消費者の現実を的確に指摘する全米各地のリポートにあぜん。米のスーパーなどで見た超肥満体形の庶民の多さもその一端と納得した。政治や経済、文化と視座も広く、日本も早急に検証すべきだと実感。食問題の入門編だが、ホラー映画のような戦慄(せんりつ)が走る。(鈴)