毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.5.12
特選掘り出し!:「フリークスアウト」 悲哀と友情、ドラマの核に
日本製アニメに触発された異色のダークヒーローもの「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」が評判になったイタリアの俊英、ガブリエーレ・マイネッティ監督の長編第2作。今回はナチス・ドイツの影響下にある第二次世界大戦中のローマを舞台にした冒険アクションである。
発電体質の少女マティルデ(アウロラ・ジョビナッツォ)、毛むくじゃらの怪力男フルビオ(クラウディオ・サンタマリア)、虫使いのチェンチオ、磁石人間のマリオというサーカス団の4人が、父親代わりの団長と離ればなれに。やがて彼らは、異常な人体実験を繰り返すドイツ人フランツ(フランツ・ロゴフスキ)の陰謀に巻き込まれてしまう。
特殊能力を持つ4人組がパルチザンとともにナチスに立ち向かうバトルシーンが大きな見せ場だが、マイネッティ監督がより注力したのはキャラクター描写。社会からはみ出した異形の者たちの境遇は、トッド・ブラウニング監督の古典「怪物團」を想起させ、彼らの悲哀と友情をドラマの核にした。
人間くさいユーモアと情感、スペクタクルを盛りつけた映像世界は、濃厚な劇画調でありながら繊細さも息づく。伊アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞など6部門を受賞した。2時間21分。東京・新宿バルト9、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(諭)