毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.11.15
時代の目:「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」 圧倒的な物量と視覚効果
ハリウッド伝統のジャンルであるスペクタクル史劇を革新的な技術でよみがえらせ、米アカデミー賞5部門を受賞した「グラディエーター」(2000年)。リドリー・スコット監督が再びメガホンを執り、その後日談を完成させた。
前作から十数年後。アフリカ北部のヌミディアに亡命していたローマ人のルシアス(ポール・メスカル)が、将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ軍に妻を殺害される。復讐(ふくしゅう)に燃えるルシアスは、奴隷としてローマに戻り、コロセウムの剣闘士となる。
凶暴な猛獣との激闘、水浸しのコロセウムで再現された古代の海戦など、圧倒的な物量と視覚効果を投じた見せ場はさすがの迫力。宿命的ルーツを背負ったルシアスを中心に、狂気じみた双子の皇帝の統治下で腐敗したローマ帝国の政治劇やメロドラマが展開する。
劇中では前作の主人公マキシマスの伝説が語られ、演じたラッセル・クロウも回想シーンに登場。さらに、策略家の奴隷商人マクリヌス役、デンゼル・ワシントンの助演が異彩を放つ。見る者の心を揺さぶるエモーションの濃度は前作に及ばないが、前作の主要な登場人物が不在の続編としては及第点の出来。2時間28分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)