毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.7.07
チャートの裏側:ハリソン、変幻自在の奮闘
このスタートをどう見るか。15年ぶりのシリーズ最新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」だ。主演のハリソン・フォードは、実年齢で80歳を迎えた。冒険活劇のヒーローは健在なのか。期待と不安の中、3日間の興行収入は6億5000万円。最終30億円台は狙える。
ナチスが敵である。だから時代設定は戦争のただ中で、若きジョーンズが登場する。ハリソンは最先端の映像技術により若い姿を見せる。時代はアポロ11号が月面着陸を果たした1960年代末のニューヨークに一気に飛ぶ。ジョーンズは年を取った。ハリソンの風貌も年を重ねた。
この時点で、アクションは切れ目なく続いている。どれも鮮やかで苛烈極まる。圧倒的な描写力と言える。ハリソンが奮闘しているのだ。若いときは当然ながら、老いた60年代でもパレードの中、馬に乗り、繁華街から地下鉄までを走り回る。感動する。気持ちがざわつく。
映像技術の進化はすさまじい。ハリソンの風貌から彼が絡むアクションまで、まさに変幻自在だ。そこが本作の大いなる見どころで機動力だ。突拍子のないラストの展開も驚く。さまざまな局面を通して映画のマジックが全開される。ただ、マジックは全能ではない。本作が壮大な実験作に見えてきた。今後の興行の推移が、その意味の一つのバロメーターになるだろう。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)