Netflixで独占配信中の「キル・ボクスン」

Netflixで独占配信中の「キル・ボクスン」

2023.4.07

配信チェック:「キル・ボクスン」 〝殺し屋〟と〝母親〟の両立

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2月のベルリン国際映画祭で招待上映された韓国のアクション作品。先月末から、映画館ではなくインターネット配信されている。

主人公のキル・ボクスン(チョン・ドヨン)は、暗殺組織に所属するすご腕の殺し屋。冷静に「仕事」を終えて家に帰ると、シングルマザーとして思春期の娘、ジェヨン(キム・シア)の面倒を見る。正体を我が子に隠し、家族を養うために働く日々。ある日、最後のつもりで挑んだ任務で「仕事は必ず請ける」という組織のおきてに反する行動を取る。

冒頭の約10分間、暴力団員(ファン・ジョンミン)とボクスンが対決。日本刀とオノでの斬り合いに、ド派手なアクション作品の期待が高まる。ただ、昼間の彼女は娘の態度に手を焼き、ママ友に愛想を振りまく。その落差が何だか不思議だ。

「殺し屋」と「母親」の、二重生活の両立。ボクスンが抱く葛藤は、性質の違う要素を一つの作品に収める製作者のそれでもあったはずだ。私の印象では後者の「ホームドラマ」の要素がやや強め。どうバランスを取ろうと挑んだか、皆さんも確かめてみては。ピョン・ソンヒョン監督。2時間19分。ネットフリックスで独占配信中。(屋)