「花嫁はどこへ?」

「花嫁はどこへ?」© Aamir Khan Films LLP 2024

2024.10.04

「花嫁はどこへ?」 インド映画の多様性と独自性と可能性

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2001年、インドの村。結婚式を終えた2人の花嫁は同じベールで顔が隠れていて、満員列車の中で入れ違ってしまう。内気で夫に従順なプール(ニターンシー・ゴーエル)、賢明で勝ち気なジャヤ(プラティバー・ランター)。育ちも性格も異なる2人の女性が遭遇した運命のいたずらの結末は――。

年間の製作数、映画館入場客数ともに世界一の映画大国・インドが生んだ愛すべき逸品。ユーモラスな展開の中、カースト社会下の結婚事情や伝統的女性観への懐疑ものぞかせる。プールとジャヤのそれぞれの出発と表情が涙腺を優しく刺激する。

インド映画は「ムトゥ 踊るマハラジャ」のような劇中の歌と踊りが特徴だが、本作にその要素はなく、上映時間も2時間4分とそれほど長くない。豊かな大自然、村落の暮らし、駅の屋台で売られるソウルフードなど細部が丁寧に描かれ、インド映画が持つ多様性と独自性、可能性を強く印象づける。世界的ヒット作「きっと、うまくいく」に主演した国民的スター、アーミル・カーンが製作に関わった。キラン・ラオ監督。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(坂)

ここに注目

自分で人生を切り開こうとするジャヤと、古い価値観に疑問を持たず、トラブルをきっかけに図らずも自分の可能性に気づくプール。対照的なふたりに対する監督のフラットな視線が、この映画を風通しの良い作品にしている。生活者のたくましさを感じさせる駅の屋台の女主人も最高のスパイスに。(細)

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