毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.6.23
「探偵マーロウ」
米ロサンゼルス。私立探偵、フィリップ・マーロウ(リーアム・ニーソン)はブロンドの美女クレア(ダイアン・クルーガー)から「姿を消した元愛人を捜してほしい」という依頼を受ける。その男は車にひかれて亡くなっていたが、クレアは彼を見かけたと主張するのだった。
ニーソンは映画出演作100本目で、レイモンド・チャンドラーが生み出した探偵マーロウを演じる。原作はベンジャミン・ブラック(ブッカー賞作家ジョン・バンビルの別名義)による小説で、チャンドラーの「ロング・グッドバイ」の公認続編。アクション俳優の印象が強いニーソンへの先入観のせいか、マーロウとしては年齢を重ねているためか、序盤は違和感があったが、枯れた味わいでハードボイルドな世界との親和性を感じさせてくれた。
舞台は1939年、物語はハリウッドの迷宮の奥深くへ。時代のムードを怪しく伝える美術や衣装を存分に鑑賞する楽しみもある。「クライング・ゲーム」などで知られる名匠ニール・ジョーダン監督のもとに、ジェシカ・ラング、アラン・カミングら豪華な俳優陣が集結。1時間49分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(細)
ここに注目
ハンフリー・ボガートやエリオット・グールド、ロバート・ミッチャムらが演じてきたマーロウ。年輪を重ねたニーソン版は渋みが加わって好感度高し。律義でユーモアがあり、諦めないマーロウは健在で、ニーソンが演じたことで品性や誠実さがにじみ出て新たな魅力になっている。(鈴)