「ネクスト・ゴール・ウィンズ」 ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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2024.2.16

「ネクスト・ゴール・ウィンズ」 世界最弱のサッカー代表チームがもぎ取った初勝利

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

面白いスポーツ映画の定石は、王者より負け犬に光を当てること。その点、南太平洋に浮かぶアメリカ領サモアのサッカー代表チームの弱さは並外れていた。2001年のサッカー・ワールドカップ・オセアニア予選で豪州代表に0-31の記録的惨敗を喫し、FIFAランキング最下位の同国は、まさに世界最弱の代表チームだった。そんな米領サモアが新たに赴任したトーマス・ロンゲン監督の指導で一念発起し、11年の予選で初勝利をもぎ取った実話の映画化だ。

公私に問題を抱えたロンゲン(マイケル・ファスベンダー)はかんしゃく持ちの孤独な男。チームの面々もトランスジェンダーの選手、豪州戦で心に傷を負ったゴールキーパーなど個性派ぞろい。「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ監督は、文化の違いを超えて信頼関係を育む登場人物たちに〝挫折の克服〟という共通点を見いだし、普遍的なヒューマンドラマに仕上げた。おおらかなユーモアが満載で、結末は分かっていても爽快。これほど心地よく共感できる映画は、今どき貴重かも。1時間44分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

ここに注目

米領サモアの緑豊かな自然、ポリネシアの暖かな潮風も、この映画の主役だろう。登場する人物たちの陽気でおおらか、ポジティブな姿は、この地域の歴史や風土なればこそと思えてならない。隅々にまで浸透しているゆる~い感じやベタな感動に身も心もまかせ、一つの幸せの形に浸るのも悪くない。(鈴)