「オールド・フォックス 11歳の選択」 ©2023 BIT PRODUCTION CO., LTD. ALL RIGHT RESERVED

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2024.6.21

「オールド・フォックス 11歳の選択」 厳しい現実に精いっぱい立ち向かう男の子

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1989年台北郊外。11歳の少年リャオジエ(バイ・ルンイン)はレストランで働く誠実な父タイライ(リウ・グァンティン)が家を買い、亡き母の夢だった理髪店を開くことを心待ちにしていた。しかし、不動産価格が高騰し夢は断たれる。リャオジエは〝腹黒いキツネ〟と呼ばれる地主のシャ(アキオ・チェン)から、生き抜くには「他人など知ったことか」と心得ろと諭された。バブル期を背景に正反対な2人の大人の間で揺れる少年を描いた。

急激に進む拝金主義と人を思いやる風潮との葛藤を骨格に据えた。父子の暮らしぶりやキャラクターを丹念に映す演出は、重厚でありながらも流麗でよどみがない。雨上がりの舗道や公園などの映像からは、湿度や匂いも湧き立つようだ。赤を着こなし父子を気遣う〝美人のお姉さん〟リンや、門脇麦が演じる有力者の妻ジュンメイの憂いと悲しみも、物語に奥行きを与えた。シャオ・ヤーチュエン監督の、生きることへの複雑なまなざしがしみる。ホウ・シャオシェンが製作、台北金馬映画祭で4冠。1時間52分。東京・新宿武蔵野館、大阪・なんばパークスシネマほかで公開中。(鈴)

ここに注目

他者への思いやりを持つ者が負けて、それを持たない者が勝つ世界。台湾のバブルを背景に描かれる、歯を食いしばりながら厳しい現実に精いっぱい立ち向かう11歳の男の子の姿が痛ましい。日々の暮らしを積み重ねながら時代のムードを伝えるシャオ監督の作風が、ホウの遺伝子を感じさせる。(細)

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