「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」 ©DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinéma.jpg

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2024.3.29

「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」 自らの手で人生を変えようとする青年のサクセスストーリー

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

フランスの天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝の映画化。少年ヤジッドは母親に育児放棄されるが、里親の家で食べる手作りのスイーツが大好きで、最高のパティシエになることを夢見ていた。青年になったヤジッド(リアド・ベライシュ)は児童養護施設で暮らしながら、パリの高級レストランで見習いとして働くチャンスをつかむ。

貧困や犯罪、同僚の策略など苦難に遭いながらも、夢を諦めずに22歳で世界一のパティシエに上り詰めた男の実話をシンプルかつ感動的に描写。自らの手で人生を変えようとする青年のサクセスストーリーだが、職人芸ともいえる菓子作りの繊細さや美しさ、探求心と映像との相性が良く、いかなる時も努力を忘れないヤジッドに次第に肩入れしたくなる。冒険家やアーティストの側面を持つ菓子職人の奥深さが作品に深みを加えている。ヤジッド本人が監修した「パリ・ブレスト」や「フォレ・ノワール」など登場するスイーツの数々に目も舌も魅了されること必至。セバスチャン・テュラール監督。1時間50分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

異論あり

ダイジェスト版ヤジッド人生ゲームの趣。底辺から頂点へ、語り口の速度を変えずに突き進み、場面転換ごとにステージが上昇。痛快ではあるものの影の部分は描かれず、〝偉人伝〟に終始して、いささかくたびれる。ラブストーリーが一切ないのも珍しい。(勝)

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