毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
「恋脳Experiment」©2023 ぴあ、ホリプロ、電通、博報堂DYメディアパートナーズ、一般社団法人PFF
2025.2.14
「恋脳Experiment」 殻を破り解放されていく彼女にエール
中学生の仕草(大月美里果)は「恋をするとかわいくなれる」というウワサを聞き、同じ塾の男子に告白したが思うようにいかない。数年後、美大生になった仕草(祷キララ)は、恋人の佐伯(平井亜門)から一方的に別れを告げられる。社会人になり、一見理想的な金子(中島歩)に出会うが……。
恋愛の辛らつさをリアルかつコミカルに抽出し、男らしさ、女らしさの固定観念、男性の身勝手さや情けなさを浮き彫りに。笑いと同時に、彼らの言動にはイライラも募る。アニメを駆使したり身体性を強調したりして、仕草が自分の殻を破り解放されていく様を表現。終盤、ぎこちなく踊り始めた仕草が次第に軽やかにステップを踏む姿は、彼女にエールを送るかのよう。
仕草は表現者として、過去の男たちへのわだかまりや不信感を〝自分の葬式〟といった作品に転化するものの、一人の人間としての心情やその変化は不透明。ラストには、もやがかかったような感覚も残った。PFFスカラシップ作品。岡田詩歌監督。1時間50分。東京・新宿シネマカリテほか。大阪・第七藝術劇場(3月29日から)など全国でも順次公開。(鈴)
ここに注目
〝今時〟らしくない依存体質として登場する仕草。そのおかしくも痛々しい空回りと失敗で笑わせながら、恋愛関係における権力勾配を浮き彫りにする。映画の見かけはキュートでも、主張は骨太。破調をものともしない自由な発想も、それを粗削りなまま噴出させるぎこちなさも、新人監督らしいまぶしさ。(勝)