「サン・セバスチャンへ、ようこそ」 © 2020 Mediaproducción S.L.U., Gravier Productions, Inc. & Wildside S.r.L.

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2024.1.19

「サン・セバスチャンへ、ようこそ」 古典映画へのオマージュやパロディーをちりばめ遊び心たっぷり

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

人生初の小説執筆に取り組んでいる熟年のアメリカ人男性モート(ウォーレス・ショーン)が、映画業界で働く妻スー(ジーナ・ガーション)の付き添いでスペインのサン・セバスチャン国際映画祭に参加することに。夫婦仲が冷えたスーの浮気を疑うモートは、現地の女性医師ジョー(エレナ・アナヤ)に恋心を抱くが……。

ウディ・アレン監督がスペイン・バスク地方の風光明媚(めいび)なリゾート地で撮り上げたロマンチックコメディーだ。悩める主人公が人生の意味を探し求めて珍騒動を繰り広げるというアレン作品ではおなじみの筋立てだが、今回の語り口は振りきったように軽く、深刻さは皆無。自らが愛する古典映画へのオマージュやパロディーをちりばめ、映画マニアである主人公が現実と虚構を行き来する様を遊び心たっぷりに描いた。鮮やかなカラー映像とモノクロの幻想シーンを対比させた撮影監督は名手ビットリオ・ストラーロ。ベルイマン、フェリーニなど、劇中で引用される9作品の題名を言い当てるのも一興かも。1時間28分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)

ここに注目

大筋の物語はいつものアレン作品と同じ。インテリで皮肉屋、小難しいことを延々と口にする主人公の恋模様を織りなして、ペーソスと愛をくすくす笑いに包み込む。今回は敬愛する監督作品に加え、サン・セバスチャンの街に降り注ぐ陽光もたっぷり。バルでの美食があったら完璧だったけど……。(鈴)

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