毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.11.15
「ロボット・ドリームズ」 セリフのない物語が紡ぎ出す出会いと別れ
1980年代の米ニューヨーク。一人で電子レンジを見つめ、テレビディナーを食べて孤独な夜を過ごすドッグは、目にしたCMに心ひかれ、ロボットを購入。マンハッタンの街を歩きながら心を通わせるが、海水浴を楽しんだ帰り道にロボットはさびて動けなくなってしまう。季節がめぐる中、ドッグはまた一緒に過ごしたいと願い、ロボットは何度も再会の夢を見る。
「ブランカニエベス」などで知られるスペイン人監督、パブロ・ベルヘルが同名のグラフィックノベルをアニメ化。擬人化された動物たちが暮らす懐かしい街を舞台に、出会いと別れ、記憶についての物語を紡ぎ出した。人生におけるすれ違いを描いた「パスト ライブス/再会」を思い起こす人も多いかもしれない。シンプルなタッチだがキャラクターたちの表情は豊かで、マンハッタンの情景は映画で見た名場面のようにノスタルジック。セリフのない物語のなかで音楽が大きな意味を持ち、アース・ウインド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」が涙腺を刺激する。1時間42分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほか。(細)
ここに注目
簡潔な線の絵で一言のセリフもなく、感情の機微を伝える演出が秀逸。派手なキャラクターやアクションに頼らず、感情表現をアニメならではの手法で追求したという点では、日本の「ルックバック」に通じるかも。〝売れる〟ことばかり狙わない、こんなアニメ作品、もっと見たい。(勝)