「サントメール ある被告」 © SRAB FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA – 2022

「サントメール ある被告」 © SRAB FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA – 2022

2023.7.14

「サントメール ある被告」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

フランス北部、サントメール。妊娠中の若き女性作家(カイジ・カガメ)は、生後15カ月の娘を海辺に置き去りにして殺人罪に問われているロランス(ガスラジー・マランダ)の裁判を傍聴する。留学生としてセネガルからフランスへと渡った聡明(そうめい)なロランスの身に何が起こったのか。

数々のドキュメンタリーを手掛けてきたアリス・ディオップ監督は、実際の裁判記録をセリフに取り入れる手法を採用。現代社会で見過ごされてしまう存在にカメラを向け、観客を緊迫感あふれる傍聴席へと引きずり込む法廷劇を完成させた。

年の離れた夫など証言者によって真実は形を変えていく。しかし彼女の生い立ちや経歴が明らかになるにつれて分かってくるのは、移民であること、女であることの重圧だ。最終弁論では母という生き物や母と娘の関係が〝科学的〟に語られるが、監督が息苦しい母性神話の呪縛について問いを投げかけているようにも感じた。ベネチア国際映画祭審査員大賞(銀獅子賞)、新人監督賞受賞作。2時間3分。東京・Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

ここに注目

幼い頃に自分にきつく当たった母との亀裂に悩む女性作家が、裁判の傍聴を通じて、かつて母が抱いていた苦しみを理解し、自らが母になることも受け入れていくという複合的な構造が作品を重厚なものにしている。ドキュメンタリー作家のディオップ監督が「物語=虚構性」の力を最大限に生かした。(光)

この記事の写真を見る

  • 「サントメール ある被告」 © SRAB FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA – 2022
さらに写真を見る(合計1枚)