2023.3.31

「シン・仮面ライダー」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

昭和の時代に絶大な人気を誇った特撮シリーズを、庵野秀明監督がリブートした。秘密結社SHOCKERによってバッタオーグに改造された本郷猛(池松壮亮)が、幾多の葛藤に苦しみながら、仮面ライダーとして世界を救うために闘う姿を映し出す。

オリジナル版へのリスペクトが随所にうかがえる半面、コミュニケーションが苦手で繊細な青年として描かれる本郷のキャラクターをはじめ、庵野監督のアレンジが満載。本郷と行動を共にするヒロインの緑川ルリ子(浜辺美波)、孤高の仮面ライダー第2号/一文字隼人(柄本佑)も存在感たっぷりに表現され、多彩な怪人とのバトルが繰り広げられる。ダムや工業地帯などの抜群のロケーションを背景にしたロングショット、バイクのサイクロン号の疾走シーンに目を見張る一方、映画の熱量を下げる理屈っぽい棒読みの長ゼリフ、チープなCGには首をかしげた。観客の世代や感性次第で、これほど賛否が分かれるであろう作品も珍しい。2時間1分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほかで公開中。(諭)

異論あり

元の作品への思い入れや知識がなくても十分に楽しめた過去のシン・シリーズと違い、今回はそれがない者にはついていくのが困難だった。4DXスクリーンで見て、バイクの風や返り血を体感するのが案外楽しかったことと、どんなシーンでも美しすぎる浜辺美波に救われた。(久)

異論あり

製作側から「映画評での場面写真使用は認めず」とのお達しで、今回はもう一言。

ゴジラやウルトラマンと異なり、元は人間で等身大。「悪を倒す正義の味方」とのおとぎ話構造を崩し、理詰めで世界観を構築すると超人的殺傷能力も生々しい。楽しめるもののカタルシスは薄め。(勝)