海上自衛隊の潜水艦がアメリカの原子力潜水艦に衝突して沈没するが、事故は日米が極秘裏に建造した日本初の高性能原潜「シーバット」に乗務員を乗務させる偽装工作だった。しかし、艦長の海江田四郎（大沢たかお）はシーバットに核ミサイルを積載してアメリカの指揮下を離れ、のちに独立国を宣言。日本政府はアメリカより先にシーバットを捕獲しようと、深町洋艦長（玉木宏）のディーゼル潜水艦「たつなみ」を出航させる。

かわぐちかいじの同名人気漫画の実写化。で、この後どうなるのか、というところで映画は終わる。続編への壮大な予告編か。しかも、この時期に製作された割にメッセージ性は脆弱（ぜいじゃく）。核武装肯定派への後押しになりかねない。海江田の憂国的セリフ回しや表情だけではもったいない。潜水艦映画独特の閉塞（へいそく）状態による緊迫感もさほど感じられず、日本政府の場面も通り一遍の閣僚会議のやり取りなど筋立てを追うのに四苦八苦の感も。「ハケンアニメ！」で注目された吉野耕平監督は何を撮りたかったのか、首をかしげてしまった。1時間53分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。（鈴）

ここに注目

「序章」とサブタイトルを付けたくなるくらい、え！ここまで？という終わり方。しかし、無表情で動きも少ないにもかかわらず、「キングダム」での王騎将軍並みのカリスマ的存在感を見せてくれた大沢に、たとえ何章まで続いてもついていこうと決めた。最後まで丁寧に作ってほしい。（久）