「ソフト/クワイエット」 © 2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC.  All Rights Reserved..jpg

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2023.5.19

「ソフト/クワイエット」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

幼稚園に勤めるエミリー(ステファニー・エステス)は「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成。初会合には多文化主義や多様性を重視する現代の風潮に不満な女性6人が集まる。過激な思想を共有した彼女たちは2次会でエミリーの家に行く途中、食料品店でアジア系の姉妹と口論になる。怒りと不満が収まらない4人は姉妹の家に入り込み惨劇を起こしてしまう。

コロナ禍で世界的により懸念される人種差別的なヘイトクライムが増加する現代を、政治や社会といった大上段からではなく市民の目線で切り取った。ナチスをほうふつさせるエミリーらの狂気じみた言動だけでなく、同調圧力に組み込まれていく人間のおぞましさを、全編ワンショットで息つく間もなく映像化した。自分たちの優位性の妨げ、相いれない思考の人間を完膚なきまでにたたきつぶす傾向に異議を唱えている。インディーズ感たっぷりだが、時代を見据えたタイムリーな作品。長編デビューとなったベス・デ・アラウージョ監督の、熱量あふれる意欲作だ。1時間32分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

見た目はごく普通の白人女性たちが、教会の集会室でナチスのカギ十字をあしらったパイを囲み、日ごろため込んだ不満をぶちまける。そんなあまりにも不条理な光景が、誇張されたブラックジョークで済まされないのが、今の米国の現実なのだろう。恐ろしくも目が離せない社会派サスペンスの快作だ。(諭)

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