「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」

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2024.12.13

特選掘り出し!:「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」 〝男らしさ〟呪縛のスリラー

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

5月に本欄で紹介したデンマーク・オランダ合作映画「胸騒ぎ」は、避暑地で出会った2組の夫婦の交流がおぞましい悪夢と化す恐怖劇だった。悲惨すぎる結末ゆえにネット上で〝胸くそ映画〟という感想が飛び交った同作品を、「M3GAN/ミーガン」などのヒット作で知られる映画会社ブラムハウスが早くもリメークした。

今回の〝被害者〟は、ロンドン在住のアメリカ人夫婦ベン(スクート・マクネイリー)とルイーズ(マッケンジー・デイビス)。イギリス人夫婦パディ(ジェームズ・マカボイ)、キアラ(アシュリン・フランチオージ)が暮らす田舎の一軒家に招かれたベンらは邪悪なワナに絡め取られていく。

和気あいあいとしていた両夫婦の関係にズレが生じ、疑惑が持ち上がる展開はオリジナル版を踏襲。その半面、失職中で妻との仲が冷めているベン、野性的で奔放なパディのキャラクターを対比し、現代的なジェンダーの視点を強調した脚色が興味深い。サバイバルアクションに転じる終盤の展開はいかにもハリウッド的だが、〝男らしさ〟の呪縛という主題を心理スリラーに応用した本作、決して後味は爽快ではない。ジェームズ・ワトキンス監督。1時間50分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

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