「リトル・マーメイド」 © 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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2023.6.09

時代の目:「リトル・マーメイド」 実写化で物語も現代的に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ディズニーアニメーションの名作がついに実写化された。監督は「シカゴ」のロブ・マーシャル、新曲はアニメ版も手がけたアラン・メンケンが作曲、「モアナと伝説の海」のリン・マニュエル・ミランダが作詞を担う盤石の布陣だ。主人公は父である海の王トリトン(ハビエル・バルデム)に厳しく育てられ、人間の世界に憧れる人魚のアリエル(ハリー・ベイリー)。嵐の日に王子に出会い、魔女アースラ(メリッサ・マッカーシー)と「3日間だけ人間の姿になれる代わりに美しい声を差し出す」という取引をする。

赤毛で白い肌のアリエルを黒人のシンガー、ベイリーが演じることが発表された際には、論争も起こっている。しかし彼女は好奇心いっぱいに輝く瞳と伸びやかでエモーショナルな歌声でアリエルを演じ切り、プリンセスにふさわしいことを証明してみせた。アリエルを突き動かすのは、王子への恋心よりも分断された世界の境界線を飛び越えていきたいという願いにも感じられ、物語も現代的に。姉妹のキャラクターにも多様性が感じられ、魚や貝たちが舞い踊る海の中に潜り込んだような「アンダー・ザ・シー」の場面では、実写ならではの楽しさを存分に味わえる。2時間15分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)