「東京組曲2020」 ©️「東京組曲2020」フィルムパートナーズ

「東京組曲2020」 ©️「東京組曲2020」フィルムパートナーズ

2023.5.12

「東京組曲2020」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

新型コロナウイルス感染拡大で最初の緊急事態宣言が出された直後、2020年4月22日の三島有紀子監督の体験が発想の起点となった短編集。三島監督の呼びかけで、20人の役者たちがコロナ禍の出来事と思いを自ら撮影、三島監督が監修してまとめた。経験したことのない災厄に仕事を奪われ、戸惑いの中で何を感じたか。映像として記録に残したいという思いから製作された。

出演予定作品の撮影が中止になり、将来への見通しが砕かれた人、目に見えぬウイルスにおびえ、家族との接触を断絶する人。えたいの知れないものへの恐怖と反応を記録した。ドキュメンタリーと銘打っているが、三島監督が演出を提案したケースもあったという。組織への帰属性が薄い役者がどう考え、動いたかを見つめ、提示した。

感染対策が個人や事業者に委ねられ、医療体制が大きく変化したこの時期、誰もが経験したコロナ禍の思いを見直す格好の機会となりそう。1時間35分。東京・シアター・イメージフォーラム。大阪・シアターセブンなどで近日公開。(鈴)

ここに注目

俳優が自分に起きた出来事を演じながら記録して、映像はドキュメンタリーともフィクションともつかぬ、あわいをさまよっている。作品中の俳優たちの、濃淡さまざまな反応を見ながら、コロナ禍という非日常に漂っていたあの居心地の悪い日常感を呼び起こされる思いだった。(勝)

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